変態紹介⑤燕

2017年09月26日

変態紹介記事、最終回となる第5回は、四人目の変態『燕』です。
ネタバレ等を含む内容になりますので、プレイ前だけどネタバレOKな方、またはクリア済の方のみご覧頂くようお願い致します。 

下僕という名の騎士(ナイト)

原作・親指姫では、主人公の親指姫に助けられ、その恩返しをするも彼自身の恋は叶わず、王子と親指姫を繋ぐ恋のキューピッド的存在となった燕。
本作では、原作通り親指姫に助けられ、王子と親指姫を結びつけるキーパーソンとなりますが、最後は自分の命と引き換えに、親指姫を王子の束縛から助け出してくれるナイト的存在となります。

どんな命令も淡々とこなし、自分や主人さえも殺す事を躊躇わない。王子との絶対的な主従関係などは、企画当初から固まっていました。無表情で言葉も機械的、軍人らしい口調と仕草、物として扱われる事に少しの抵抗も見せない従順さ……相反して、時折見せる人間らしい表情等のギャップが、彼の一番の魅力になるだろうと思いつつ、燕というキャラクターを作っていきました。

声優・鶴谷皇輔様について

当初、燕は「ショタっぽく短パンを履かせる」というアイデアが出るほど、少年らしい可愛さを製作側はイメージしており、ボイスに関しても、「いかにも少年ぽい声質」を想定しておりました。当然、年上の王子よりも、燕の声は高いだろうと考えていました。

ところが、応募音源を順に聴かせて頂いていた所「少年らしさを感じさせる“低音ボイス”の燕」と出会い、これは……これが燕の声だったら……ヤバイぞ……?!(語威力はありません)と、当初のイメージを180度転換させる事になったのです。この時点で王子のボイスはまだ決まっていなかったのですが、燕は低音でいこう、というのはすぐに決まりました。

燕を担当して下さった鶴谷皇輔様は、普段は舞台などの役者さんをされているのだそう。今年の11月には舞台演出のご予定もあるそうです。

淡々とした話し方、というのは採用時点でお願いしていたところなのですが、最初に納品して下さった燕は割りと感情表現が豊かだった為「もっと棒読みでお願いします」という、普通に考えればなかなか奇妙なリテイクをお願いしたのでした……。
他にも「燕はぼそぼそとした話し方をしますが、聞き取りやすさは失くさないように……」と、これまた難しい注文をさせて頂いておりました。不慣れさから、こちらからのお願いの仕方も良くなかった為、リテイクは数回に亘りました(本当に申し訳ありませんでした……)。ご本人様曰く「かなり迷走した」そうなのですが、最終的には理想通りの「どんな言葉も淡々と話す燕」をきっちり演じて下さり、恋乙女モードでは人間らしさを取り戻してしまった燕の戸惑いも、完璧に表現して下さいました。

恋乙女モードで、厨房に駆けつけた燕が零す「姫様がご無事で……良かった」という台詞は、彼が口にする唯一の「自分の気持ち」。後にも先にも、彼が感情を言葉に代えて表現する事はありません。
他の台詞と違い彼の感情を垣間見る事のできる貴重な台詞になっていますので、燕の恋乙女モード未プレイの方には是非、このシーンで鶴谷皇輔様演じる燕の心からの「言葉」を、聴いて頂きたいです。

消えた、もう一つの結末

実は、企画当初、本作の物語の結末は「親指姫は燕と共に王子の元から逃げ出し、新しい人生を歩み始める」という希望のあるものでした。もう「姫様」では無くなった親指姫と「下僕」ではなくなった燕が、お互いに対等な人間として名前を呼び合う......という、なかなか甘いエンディングを構想していました。

燕は勇気を出して「親指……姫」と、様を付けずに呼ぶことを試すものの、気恥ずかしさに顔を覆い「ああ、駄目だ、これは練習が必要だ」と言って俯き、その様子に親指姫は微笑む……そんな、今にして思えば、夢のようなハッピーエンドがあったのです。

しかし、この結末では「全員変態」というコンセプトから燕が外れてしまう事、「乙女ゲームにおいて、対象キャラの誰か一人を選ぶ事がTrue扱いになるのは好ましくない」という観点から、燕も他の変態どもと同様に扱う事になりました。 

要するに、当初彼は「変態」には含まれて居なかった為、いかに彼を「変態の一人」として変態さを強調するかは、シナリオ担当の悩んだ所でした。

最終的に「命令される事だけを望む“物”」という結論に行き着き、現在の燕が誕生しました。燕の性悪ENDでのみ、彼の異常なまでの「下僕精神」を垣間見る事が出来るようになっており、それ以外はやはり基本的には「ちょっと極端だけど良い人」という印象を抱かれがちな燕。もっと変態らしさをもっと追及できたのではないか……という想いも無くは無いのですが、彼と云う存在はきっと本作の唯一の良心として存在して良いものだったと、今となっては思います。
沢山のプレイヤーさんに、彼が受け入れられている事こそが、その証明になっていると、信じています。

余談ですが、花の国の母国語はデンマルク語で、親指姫は日本語しか話せない為、王子と燕は2ヶ国語を自在に話せる……のですが、実は燕はもう一つ、話せる言葉があります。琉球語。燕の故郷は、琉球王国より南に位置する島だったという設定になっています。
実は、本編で彼が沖縄訛りを発揮している台詞が1つだけあるのですが、気付いた方はいらっしゃるでしょうか……?

彼の恋乙女モード発動条件に「王子を突き飛ばす」または「悲鳴を上げる」という選択肢を選ぶ、というものがあります。これは「主人である親指姫が、王子に対し拒否反応を起こした」という印象を、燕に強く与えます。
“新しい主人である親指姫が、王子を好意的に思っていない”。
更に、閉じ込められたと勘違いした親指姫が夜中に部屋を抜け出し、王子の用意したオルゴールの仕掛けに怯え、 喚き始める。そして、庭園での親指姫からのアプローチを受け、燕は次第に「自分が姫様をお救いせねばならない」という、“物”らしからぬ「意志」を持ち始めるのです。

燕を人間に戻してしまったのは、親指姫自身。プレイヤーの選択が、燕と親指姫自身を、悲惨な結末へと追い込んで行く……もしこれが純粋な乙女ゲームであれば、あってはならない展開なのかもしれません。しかし、『変態道中蛮万歳』というサイコホラーADVのエンディングの一つとしては、相応しいものになったのではないか……と、シナリオ担当は思っています。……いかがでしたでしょうか?


全5回にわたりお送りしてまいりました「変態紹介」、今回が最終回となりました。楽しんでいただけましたでしょうか? プレイ後も変態達へと想いを馳せるプレイヤーの皆様が楽しむ手助けになればと思い、裏話を書かせて頂きました。

また、素晴らしい声優の皆様にご協力頂いたにもかかわらず、作中以外に皆様に詳しく知って頂く機会がなかなか持てなかったため、機会が無いなら作れば良い!と思い立ち、このような記事を書かせて頂きました。微力では御座いますが、皆様のお名前を知って頂ける機会になって居れば幸いです。
多方面で活躍されている声優の皆様の今後の動向も、是非チェックしてみてくださいね……!

五人の変態ともども、今後とも『変態道中蛮万歳』をどうぞ宜しくお願い致します!

代表・G