変態紹介④王子

2017年09月24日

変態紹介記事、第4回は最後の変態『王子』です。ネタバレ等を含む内容になりますので、プレイ前だけどネタバレOKな方、またはクリア済の方のみご覧頂くようお願い致します。※ 四人目の変態・燕の紹介記事は次回お送り致しますので、お楽しみに!

明るく残忍な王子様

原作「親指姫」は、主人公・親指姫は様々な苦難に遭いつつも、最後は助けたツバメに連れられ南の島へとやってきて、花の国の王子様と結婚して幸せに暮らしましたとさ……というお話。ですが、本作では花の国の王子はいわゆる「ラスボス」であり、最後の変態になっています。

親指姫の事が好き過ぎて誰にも見せたくない、もし見たら殺す!という設定はかなり早い段階で固まりました。

ゲーム内で、親指姫に声を掛けられた給仕の少女が自害する場面がありますが「理由も分からず、自分を見た人間がいきなり凄い剣幕で謝り始め、その上 目の前で自殺されたら死ぬほど怖いよね」というメンバーのアイデアをそのまま採用したものになっています。

また、本編で王子は親指姫を自分だけの物にしたいというものの、最後まで親指姫本人に危害を加える事はありません。ただ周囲の人間を消して行き、自分達だけの世界を作りたい。それが親指姫にとっても幸せに違いないと盲信するだけ。

卑劣な行為が目立つものの本人に罪悪感は無く、常に明るく、笑顔を絶やさない王子。時にはしょんぼりしたり、ちょっと寂しげに笑ってみたり、その残忍さとは裏腹に、とても純粋な心の持ち主である事も窺える、なかなか複雑な人間性を持ったキャラクターになっています。

声優・ぺけ丸様について

声優さん選考で、一番大変だったのが王子でした。理由はいくつかあるのですが、募集時に王子について「年齢と外見の割りに幼く愛らしい雰囲気を持つ」という記述をしてしまったのが最たる要因で、かなり多くの応募者様が「おバカキャラ」っぽい王子を演じられてしまったのです。

完成版をプレイして頂いた方ならお分かりかと思うのですが、王子ってそんなキャラクターじゃないんですよね…完全に自分のミスでした。そんなわけで、王子の選考は声質と表現力を最優先し、候補になった方々のホームページでボイスサンプルを試聴させて頂き、本来の「王子」を演じてくれそうな方を探す……という、遠回りな作業が必要になってしまったのでした。

そして出会えたのが、ぺけ丸様でした。
やはりご応募頂いた音源は王子のイメージとは異なるものでしたが、ご自身のホームページに掲載されているボイスサンプルで「王子の声だ!」と思えるものがあったのと、表現力自体はレベルの高い方だったので、こちらから正確に王子のイメージをお伝えする事さえ出来れば、きっと完璧に演じて下さるだろう……ということで、お願いさせて頂くことになりました。

募集時の台詞には、完成版の王子からは想像できないような、怒りの感情をあらわにしたものがありました。が、台本の作成を終えた段階で、王子は「常に笑顔で明るい」というキャラクターになっていました。ところが、これまた製作側の説明不十分で、最初に納品して頂いた音声はかなり感情表現豊かな、ダークな一面を持つ王子になっていました。不穏な台詞は怪しげに、残酷な台詞は恐ろしく、いかにもホラーゲームの最後に出て来る敵役っぽく――……普通に考えればそれが正しい表現なのですが、本作における王子の正解はそれではありません。

申し訳ないと思いつつも妥協したくなかった為、7~8割近い台詞のリテイクをお願いしました。
その際、ご提出頂いた音声の中で一番明るく演じて頂けていた台詞を指し「あの台詞を最低ラインに、元々明るい台詞は3倍くらい明るく演じて頂きたい」という旨を伝えました。すると、驚いた事が起きました。

「一部だけ残すと雰囲気が変わってしまうと思うので」と言って、OKを出していた台詞も含め、全ての台詞を演じ直して下さったのです。自分自身に妥協を許さない、プロ魂だと感じました。
また、こちらから「3倍明るく」と頼んだものの、元々かなり明るい表現をされていた台詞もあったため、そんなに変化しないだろうと思っていた部分も、実は少し、ありました。ところが、本当に3倍、もしかしたらそれ以上に明るく、狂気を感じさせるほどの無邪気さを備えた王子を、完璧に演じてくださったのでした。

おかげさまで、皆様の知る王子は現在の姿になりました。残酷な台詞も明るく、黒い部分など少しも無いかのように、いつも笑っている王子。ぺけ丸様だからこそ、ここまで追及して王子を表現して頂けたと思っています。本当にありがとうございました……!

燕の性悪ENDで、訳も分からないうちに殺されてしまう王子の台詞は他の台詞とは一味違う響きがあり、個人的にもとてもお気に入りなので、燕END未回収だという王子好きさんは是非……。

同担拒否を極めた男

使用人が親指姫の足音を聞いただけで殺される、というのはシナリオ担当がゲーム製作過程で追加したエピソードでしたが、このお陰で王子の王子らしさが確立されたように思います。

親指姫想いで、真っ直ぐな感情表現をする王子は、想像以上に沢山の方の心を掴んでいるようです。ふわふわの金髪に碧眼の王子様、というだけでもポイント高いという声もありますが、勿論彼の魅力はそれだけではありません。

彼が何故鬱金香に執着するようになったのか本編ではあまり語られませんが、彼が満たされない環境の中で育ち、乾いた心を唯一潤してくれたのが鬱金香だったのだと語るのを、恋乙女モード・クリア特典内で見る事が出来るようになっています。ただ王子様だから我侭という訳ではなく、明るい笑顔の裏にある、彼の心の闇に触れる事で、彼をただの暴君ではないと思えるようになると思います。それでこそ、王子というキャラクターの魅力を理解できるようになるのではないか、と……。

自分にとって確かなものが、たった一つでいいから欲しい。
王子は、それが叶えられる地位にあった。友を殺す事さえ厭わない忠実な下僕も手に入れて、王子の狂気は加速せざるを得なかったのかもしれません。

余談ですが、当初、土竜邸に燕が現れた時、燕が「王子から褒美がある」と言ってその場で土竜を斬り殺すというのを考えていました。
そういう展開もアリのような気がしますが、そんな光景を目の前で見せられて「王子の妃として迎える」と言われた親指姫が大人しく燕に付いて行くとは思えなかった(いや親指姫なら付いて行くかも知れないけれど…)のと、王子は香草茶の貿易の為に日本との関係性を保つ必要があるため、日本領土内で日本人に手を出す事は無いだろう、という結論に至り、現在のようなシーンに収まりました。
ただ、もし黄金虫や土竜の所業を王子が具体的に知ってしまったら、さすがに彼らも無事では済まなかった......かも知れません。

王子に関しては「最後を飾るにふさわしい変態だった」という絶賛も頂けているほど、突き抜けた同担拒否っぷりがプレイヤーさんに受け入れられているようです(勿論、恋愛対象になるかどうかは人それぞれのようですが)。ラスボスである彼をどう描くかはゲーム部分の製作担当としても悩んだ所でしたが、素敵な声優様、BGM素材のお陰で、最後の演出も十二分に盛り上げる事が出来たと思っています。

ゲームを通して、彼の彼らしさがきちんとプレイヤーさんに伝わったようで、本当にホッとしています。
本項の「同担拒否を極めた男」というのは、プレイヤーさんから頂いたお言葉です。これ以上的確に王子を表現した言葉は無いと、今になって思います。

王子を愛してくれる親指姫(プレイヤー)様……王子の事を、どうかこれからも宜しくお願い致します。


というわけで、第4回は最後の変態・王子でした。いかがでしたでしょうか?
次回は最終回……四人目の変態・燕をご紹介致します。どうぞお楽しみに!